雑誌で西加奈子さんがおすすめされていたので読んでみました。HHhHという不思議な題名のこの本。意味は「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」
この本はナチの高官で唯一暗殺されたハイドリヒとその計画の経緯が描かれた本です。「文学の新しいチャレンジ！」とか紹介されていて、読む前はどういう意味かなーと思っていたのですが、確かにこんな本は読んだことない！ジャンルとしては歴史小説なのですが、かなりの部分で著者が顔を出し、どう事実を書いたらいいか苦悩し、なんというか…オタク？
襲撃に使用されたメルセデスベンツの色にも、本当はどういった色だったのかにこだわるほど、「事実」を重要視します。歴史小説にありがちな主人公達の会話。情景。それすらも「いやいや、こんな話がされたかはわからない」と書いた後に一刀両断。どこかの書評で「司馬遼太郎的」とも書かれてましたが、確かに司馬遼太郎様もこんな感じでエピソードを列挙するよなー。しかし、そんなあくまでも黒子な司馬遼太郎と違い、著者はバンバン登場します。でも著者が悩み苦しんでいるところがまた新鮮で「読みにくいなー」と思いつつもページをめくっていくと、ついに襲撃する2人が登場します。そこからは一気読み。
ハイドリヒという人も、この暗殺の事件もまったく知りませんでしたが、「2人を助けた、歴史には登場しない名もなき人々」への著者の思いにじーんとしました。しかしこの暗殺への報復が凄まじかった…暗殺をしたことが果たしてよかったのか…とどうしても思ってしまいました。
もし著者の次作があるなら読みたいな。量産できないだろうなーと思いますが、是非次も何か書いてほしいです。
